契約彼女にした理由
クスリと笑う学を見た。



「ご要望があれば?」


「…………ないわ。」



学は首都高速に乗った。



「何処に行くの?」


「ドライブ。デートの定番だろ?」


「ふふっ、定番ね。」



私は乗り心地のよい座席に身を預けた。外の流れる景色を見つめていた。



「俺さ、葉月を見掛けた事があるんだよ。」



突然話し出した学を見た。



「ビルにあるレストランで。」


「レストラン?」


「そこでメニューを間違えられて。それなのに、持ってきたランチを文句も言わず、一緒にいた奴に逆に『これで良かったかも』なんてお人好し発言してさ。」


「ふふっ、きっと美味しかったのよ。」


「それ。普通は友達に愚痴でも溢すだろ?それもしなくて。本当は文句も言えない小心者かもって思った。」



私は学の言葉にクスリと笑った。



「当たってるのかもよ?」


「違ってた。」


「違ってた?」



学の言葉に首を傾げた。
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