契約彼女にした理由
私は目が点になった。



「嘘…………。」


「篠崎様、大丈夫ですか?」



呆然と奥に座っている男を見つめた。



「俺じゃない訳だ。」



聞こえてきた不機嫌な声に目の前に立つ男に視線を戻した。


鋭い視線を向ける男に息を呑んだ。



「俺じゃないって?」


「ごめんなさい!」



私は膝に頭がつく勢いで頭を深く下げた。



「どうしてくれる?」


「ごめんなさい!ちゃんと弁償します!」


「弁償?」


「おいくらですか?」


「…………。」



恥ずかしさに頭を上げられなかった。頭を深く下げたまま、私は動けないでいた。



「ごめんなさい、お姉ちゃんは勘違いして………。」


「勘違いで、俺はこんな目に会ってる訳だが?」


「本当にごめんなさい!」



美月も私の隣で頭を深く下げた。静まり返る店内に黒服の浜崎がタオルを渡しているのがわかる。



「吉良様って………吉良葉月だろ?このビルを所有してるB.C.Buildingの。」
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