契約彼女にした理由
「それはお袋の話か?」



学の言葉に、コーヒーに手を伸ばした手を止めた。



「そうか。」


「………。両親は恋愛結婚でお互い愛し合っていた筈なのに………結局は別れた。」


「すべての恋愛結婚が不幸じゃない。」


「わかってる。だけど父の傷付いた姿を見た私は決めたの。」


「決めた?」



私は学をじっと見つめた。



「本気で愛せる相手が見つからなければ、お見合いをしようと。」


「…………それで契約彼女に簡単になったのか?」


「そうよ。父も納得したのは結婚と恋愛は別だから。」



私は学から視線を逸らしてコーヒーに口をつけた。


テーブルにコーヒーを置いた瞬間、目の前に座っていた学が身を乗り出した。


驚きに学を見上げれば、学の唇が重なった。



「ちょっと!」


「生意気な口を塞いだだけだ。」


「生意気?」


「本気で恋愛もしないで、本気で愛せる相手が見つかるかよ。」
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