契約彼女にした理由
私は無言で下げていた頭を上げて頷いた。



「ふ~ん、吉良葉月ね。ちょっと俺に付き合え。」


「えっ?えっ?」



驚いている私の腕を掴み、強引にラウンジの入り口に向かっている。


私は覚悟を決めて、その男の後についていった。


非常階段から屋上に繋がる階段を上っていき、扉を開けて屋上に出た。


ヘリポートのあるここは誰もいなく静まり返っていた。



「間違いで俺に恥をかかせたわけだ。」


「………本当に申し訳ございません。」



じっと見つめてくる長身の男を見上げる。ニヤリとする男に眉間の皺を寄せた。



「とりあえずは…………俺の女になれ。」


「……………はあ?」



突拍子もない言葉に頭が真っ白になる。



「俺の女になれ。」


「…………意味がわかりません。」


「そのままの意味だ。俺に水を掛けた償いはしてもらう。」


「…………。」



ニヤリとする男から視線を外して背を向けた。
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