契約彼女にした理由
「駈、何を買った?」


「兄貴も気にするんだな。」


「…………。」



駈のニヤニヤとする顔に学が不機嫌になる。私は小さな箱の包みを開けた。



「…………。」


「ははっ、アメリカ土産だな。」


「ははっ、駈、嫌がらせかよ。」



小さな箱の正体は――――



「自由の女神?」


「ああ、アメリカ土産だ。部屋に飾れよ。」



自由の女神の小さな置物だ。


駈ににっこりと微笑んだ。



「ありがとう。部屋に飾らせてもらう。」


「ああ。」



私は駈のお土産を鞄に仕舞った。



「葉月、ちゃんと飾れよ。」


「はいはい。飾りますよ。」



笑いながら話す駈を無視して、頼んだお酒を飲む。



「葉月、週末に泊まりに来いよ。」


「わかった。」


「迎えに行くから挨拶する。」


「…………挨拶?」



チラリと学を見上げた。



「葉月の父親に挨拶する。」


「………。」



私は学から視線を外した。
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