契約彼女にした理由
学side



隣で眠る葉月を抱き締める。


そっと目を閉じれば俺は深い眠りに落ちていた。




『お前達のせいで俺の家族は壊れたんだ。』


『人の旦那を寝取るなんて。』




冷たい罵声を浴びせる本妻とその息子。俺達は部屋の外で母と彼女達の話を聞いていた。


母の謝る声に俺達の怒りは親父に向けられた。


親父さえ、母を好きにならなければ………。


母も親父を好きにならなければ………。



「駈、親父のようにはなるなよ。」


「兄貴も。」



母は俺達を連れて日本を離れた。俺達はまだ小学生だった。


親父はアメリカにいる俺達家族に、月に一度は会いに来た。


母も親父のために料理を振る舞ったりして嬉しそうにしていた。



母は幸せだったんだろうか?



俺は小さい頃から疑問だった。



愛人という立場の母は幸せだったんだろうか?
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