契約彼女にした理由
「葉月、愛してる。」



俺は一人の女を愛した。



それも――――



『6月の誕生日がリミット。心から愛する相手を見つける………もしくはお見合い。』


『父が孫の顔を見たいんだって。』



結婚――――



俺は踏み出せないでいた。


愛してるのに………怖い。


母の辛い過去が甦る。



妻と子供がいる立場で母との間に子供を作った親父。



『エレンを愛してる。だから離したくなかった。』



勝手な親父。



俺は葉月を離せるのか?



親父の言葉で今の俺の立場を考える。



『学、さよなら。私はお見合いする。』



いつか葉月から言われるんじゃないか?


いつか俺の隣から消えるんじゃないか?



「葉月…………。」



俺は隣に眠る葉月を抱き寄せる。葉月の温もりに自然と安堵していた。



『ただ離したくなかった。』




親父の言葉が繰り返し脳裏を過っていた。
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