契約彼女にした理由
「学、学、おはよう。」



葉月の声に徐々に頭が冴えていく。



「ふふっ、珍しい。学が寝坊なんて。」


「葉月?」


「今日、出掛けよって話したでしょ?」


「あっ、ああ。悪い、寝過ごした。」



ベッドに体を起こせば、葉月がエプロン姿で立っていた。



「学、朝ごはん作ったよ?」


「ああ。」


「どうしたの?眠れなかった?」


「悪い夢を見てたのかもな。」



微笑む葉月を見上げる。



「コーヒー淹れる?」


「ああ。今、起きる。」



葉月が俺に背を向けて部屋を出ていこうとしている。


俺は咄嗟に葉月に駆け寄り腕の中に閉じ込めた。



「学?」


「………。」



葉月の腰に回した手を葉月の手が包み込んだ。



「学?」


「悪い。葉月が消えそうで………つい………。」


「ふふっ、隣にいるって言ったでしょ?」


「ああ。悪い、夢見が悪かったみたいだ。」



葉月の腰に回した手を離した。
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