M.A.S.K.
序章
夢の中での言葉を思い出すことはできないのに。















そこで触れた物の感触、胸の痛みはどうしてこう起きた後も鮮明に残っているのだろうか。

思考回路の機能しない頭でぼんやりと考えながら瞳に指をそっとやると、まだうっすらと涙が残っている。

ああ、胸の痛みは本当だったのかと思った。



今でも時々、
「ごめんね」と呟いた、
コウの声が聞こえる。

夢の中の、妙にリアルな悲しみは、その痛みがまだ体の一部に刻まれた証なのかもしれない。

だとしたら私はこの痛みをしばらく引きずってもいいと思う。

純愛なんかではなかったし、私自身あの感情に名前をつけるのは今もってできずにいるが。

それでもあの一連の出来事は、私にとって確かに「重要」な思い出なのだから。





そんな…日々が始まる、きっかけとなったそれは

私が初めて、
本当の意味で「性」というものを意識した、
あの日のこと……。
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