目を閉じてください
3
改めてよく見ると、少し癖毛風の短めの髪。目鼻立ちのはっきりした、整った顔立ち。
エレベーターの上がるボタンを押し、来て開いた扉に吸い込まれる。
何だかわからないがもう、わたわたするだけの私。
行き先階のボタンを押すと、今度は引き寄せられ、顎をくいっと上げられた。
「はっ!?えっ!?な…???」
「虫歯じゃないみたいだな。並びのいいきれいな歯をしてる」
顔が。
近い。
吐息が掛かる。
微かにミントの香りがした。
「――まあいい。この貸しは高くつくぞ」
言うと、
唇を、
塞がれた。
――――はい!?
その内に4階についた。
開いた扉。
ふっ、と外に放り投げるように放されふらついた。
入れ違いに男性が入ってきた。
「―――おう」
知り合いのようだった。
「あのっ…!!」
振り向くと中からひらひらと手を振る真部さん。
その姿をぽかんと見ながら、扉は閉められた。