目を閉じてください


返事はない。


「あっ、呼び鈴、壊れてた」


お母さんが思い出す。


仕方なく、静かにガチャリと鍵を開け、ゆっくりとドアを開ける叶多さん。


けれど、
その向こうに見えた顔を見て言葉をなくす。


「…お、お前??何して、まさか…またあいつにちょっかい出してんじゃねえだろうな」


声にハッとする私。


「斎さん!?」


「え"っ??」


全員驚いた。


「何してるんですか!?どうしてこんなところに???」


叶多さんの後ろでフライパンを構えたままの私。


「何してるって、お前こそこいつと家で何を…」


動揺した様子で、ドアを開けた叶多さんを押し退けるように入ってきた真部さん。


「……あっ……あ…れ??」


お母さんと文玻を見た真部さんは、何となく空気を察したようだ。何か違う。


「真部さんって、あの???」


わたわたっと慌てるお母さんが座布団を探す。


「すみません!!どうぞ汚いところですが」


叶多さんに加えて真部さんまで、と。
こんな狭いアパートに、お金持ちのイケメンが2人も現れたのだ。


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