目を閉じてください
オルゴールが鳴った。
「ご指名の患者様のお越しだ。行ってきますね」
「行ってらっしゃい」
「いいですね、その笑顔。その言葉。なんだか奥さんみたいだ」
言われて赤くなる。
そんなことでも嬉しいのか。こういう高級エリート志向な方々は。
そうして入れ違いに、一仕事終わった叶多さんが入ってきた。
「お疲れ様です。コーヒーでいいですか??」
椅子から立ち上がる。
その椅子さえ輸入物のふかふかの[椅子]というより[チェア]だ。
「ありがとう。助かる」
ふーっとため息をついてソファに伸びる。
神経を使って疲れるんだろうな。
最近は直接口頭で言わなくても、笑顔で帰っておいて、ネットの口コミの評判で酷評される。
例えVIPであろうとも。
いや、VIPだからこそというべきか。