目を閉じてください
「文李さんはモテモテね」
1年先輩の栢野里織(カヤノ サオリ)さんがスタッフルームでコーヒーメーカーでコーヒーを淹れながら。
「飲むでしょう??ミルクとお砂糖は多めよね??」
「あっ、ありがとうございます、頂きます」
紙カップに淹れ、プラスチックケースにセットして、はい、と渡される。
里織さんは苗字の通り、本院であるDENTALCLINIC office KAYANO、栢野クリニックのお嬢さんだ。
次女らしく、長女は副院長として勤務しておられる。
いずれにせよ、エリートだ。
患者様の特徴、状態は元より、その記憶力は素晴らしかった。
そして美しかった。
それにもう私の飲み物の好みも記憶されている。
「とんでもないです!!私なんて変人ですし。本気で相手にする男性なんて」
「でも可愛いから。黙ってればいいのよバレないから」
黙ってれば、ね…。
はあ、やっぱりそうですか。
いや、可愛いを認めたわけではないですよ。
真部さんのことは隠していた。
世の中何が起きるかわからない。