不審メールが繋げた想い
真さんからのメールは突然だった。
【暫く、全然、連絡をしないで申し訳なかった。本当にごめん。
恥ずかしい話だけど、役作りの為に誰とも連絡を取っていなかったんだ。やり始めたモノ、いいモノにしたかったんだ。不器用だから、今の役を演じるには、何とか役になり切らないといけないと思ってね。その事だけでも先に伝えておくべきだった、うっかりしてた、ごめん】
…はぁ。も゙う、そういう事だったんだ。そればかりを考えてしまったから、だから何もかもそっちのけというか、私のことは頭から外れていたってことなんだ…。どんな内容だか粗筋程度にしか知らないけれど、苦手としているラブストーリー。望まないシーンがある…ラブシーンがあるのかも知れない。デリケートな役柄なのだろうか。もしかしたらこの先の放送内容はもっと私の願った内容に進行して行くのかも。
だったら…そうよ、一言連絡出来なくなるって、こうなるより先に言ってくれてたら良かったのよ。何も解らないから、同じ事を繰り返し送り続けてしまったじゃない…。だって私は知らなかった。連絡を取らないようにしてたんだから、仕方ないと思ってくれるわよね…。
しつこく様子を窺ったり…、集中したい時に指輪がどうとか…。送り続けた沢山のメールを見た時は、さぞ鬱陶しかったに違いない。
【母さんは今は病院に居る】
えっ。
【心配しなくていいから。悪くなってではなくて、撮影とかで俺が遠方に行っている留守中に、一人で居て何かあっては困るからと言ってね。それでなんだ】
あー、そうか、そういう事で病院に。では容態は安定しているって事なのかな。それならホッとした。
【クリスマスは何してる?】
え?クリスマス?いきなり…唐突過ぎないですか?…。
【会わないか?】
え゙っ?会うー!?
【そっちに行くよ】
え゙ーっ?!来るって……?
【指輪は持ってないと駄目だろ?返すなんて何言ってるの?それは無しだ】
返しちゃ駄目なの?…それは、…まだ今の状態が続くって事なのかな。そういう事?
……だから、来るって事?
でも、それって、必要な事?…。?
あ、待って。クリスマスに来るなんて…。どうしよう。私は何の予定もないから空いてる、つまり何の用意もしていないって事。
何かしたくても、予約だってもうきっと一杯…何も出来ないじゃない…。ん゙~、困った。
【私、クリスマスは何も用意してなくて】
あ。正直に言っちゃった。こんなの…仮にもファンなのに…、何だか寂しい気にさせてしまうかな。
【別に何も要らない】
はぁ、まあそういう風には言ってくれるでしょうけど。…どうしたらいいの?
【詩織に会いに行く。だから居てくれるだけでいい】
…あ、…なんて事。…ドヒャーな発言…。
仮にも嘘の相手に言っていい言葉ではない。こんなの…無駄に高揚させてしまうだけなのに…。
…こんなセリフ…もしかして、役を引き摺って??はまってるままなのかも。だとしたら、撮影は上手くいったのかな。
【24日から25日まで、部屋に居させて欲しい】
…え、うち?…うち?!
しかも、二日間って事は…お泊りするの?!…夜を跨いでしまうでしょ?
え、それって、何…。どうしたら…。…どうしてそこまで。…あぁ、そうだ。…うち迄は遠いから、日帰りはきつい。だから泊まるのは仕方ないのか…。そうだよ。そういう事だ。