不審メールが繋げた想い

真さんが利用出来るようなホテルの部屋なんて、この時期では難しいだろうし。どこでもいいって訳にはいかないし…。

【どうしても断れない予定があるならそちらを優先して貰って構わないけど。OKなら、車が置ける場所はあるかな?】

駐車場はある。今は空きスペースを来客用に使用出来るようになっているけど…。誰かが利用してしまったら無理ではあるけど。まず大丈夫だろう。
車で来るつもり?真さんが?
確かに車も好きで、運転も上手いらしいけど…。

【駐車場は空きがあります。でも、車で来るのですか?何かあったらどうするんですか?】

プライベートな事だとしても、そんな行動していいのかな。ちょっと都内を気晴らしに走るって距離じゃないのに。事故にでも巻き込まれたら大変…遠方でもあるし。急な仕事で呼ばれることはないのだろうか、来ちゃったら直ぐには帰れなくなるのに。

【時間を気にしたくないんだ】

…なるほど。好きな時間に移動できるから。いや、でも…納得していいのかな…?

【それに、個人的に移動する日としては、人が多い日だ。公共の交通機関は騒がしいから】

確かに。Yさんだと解った時、騒がれてしまうし、守ってくれる人も居ない。各務さんが同行する訳ではないよね?

【一人で、ですよね?】

…。

【一人だ】

あ、変な事、聞いちゃったかな。短い返信の割には間が空いたような。当たり前だ、って、言われてるみたい…。

【お母さんは?大丈夫なんですか?】

【姉貴がみる事になってる。クリスマスだから孫とプレゼント交換とかするらしい】

あー、ですよね、プレゼント、普通に用意しますよね…。私、真さんにもだけど、お母さんにもプレゼント、用意しないと…。
明日、会社帰りにデパートに寄ってみよう。プレゼントだから、何がいいか、聞くことも出来ないし、欲しいものも解らないけど…気持ちの問題よね。

【24日は多分夜中になるとしか言えない。悪いけど、俺が行くまで起きてて貰えるかな、大丈夫?】

そんな事はお安いご用です。

【はい、大丈夫です】

【変更があったら連絡するけど、多分大丈夫だと思うから】

【解りました】

RRRR…え、電話…。

「詩織、ごめんな。メール、直ぐ見もしなくて。沢山くれてたのに本当にごめん。俺、ドラマの事に精一杯になってて…」

あ、真さ、ん…。真っ直ぐというか、本当、不器用ですね。

「文字で話してたら声が聞きたくなったんだ。…じゃあ、おやすみ」

「え、あ、はい。おやすみなさい…あ、真さ…」

あ…。一瞬だ…それに一方的にもう切っちゃうなんて…。
はぁ、…狡い。こんなのは一番やってはいけない事でしょ?急に電話で話すなんて。短くても…いい声が耳に残っちゃうのに…。どうもイメージが違うのよね…。不器用っぽいのに…こんなこと。やっぱり役に入り込んで、その影響とかが出てるのかな…。そうに違いない。

あー、無駄にいい声が耳に残ってる…。『声が聞きたくなったんだ』なんて、言ってはいけません。あー、微妙に気忙しくなって来たかも。余裕のある内に部屋の掃除もしておかなきゃ。ご飯は夜中なら要らないかな…。何か要る?翌日の分は何か用意しないとね。朝ごはんなんて普通でいいよね…。ん゙ー。
はぁ、…どうして急に、来るなんて事…。
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