不審メールが繋げた想い
…各務さん。すえひろさんて名前なんだ。やっぱり漢字は末広なのかな。天涯孤独って、知らなかった。どういう天涯孤独なんだろう。…生まれた時から?それとも、もう身内が亡くなってしまったという意味?…。それなら私と同じ…。天涯孤独…なんて冷たい響きなんだろう。知らなかった。特に尋ねる事もないから、言われなければ知らなかった事だ。
あ、冷蔵庫に入れておかないといけない物よねこれ。確認してないけど、開けて大丈夫かな…。真さんじゃなかったら?ちょっと…恐い。
…真さん。聞いてみよう。真さんなら受け取ったかどうかも気になるかも知れないし。
【荷物、私宛に送りましたか?そうだとしたら開けていいものですか?】
でも、これって…来た時に一緒に開けるのがいいかな…。そういうつもりかも。今日みたいな日、気忙しくしているのだろう、仕事は大事よ。メール、しない方が良かったかも、集中したいでしょうから。どうやら真さんという人は一つのことが頭を占領すると他は気が回らなくなるタイプの人のようだ。と思う。だからまた直ぐには返信はないのかも知れない。
入っていた物をどけて冷蔵庫の棚を移動させた。これなら開けないままでも入るかな…。梱包された箱のまま押し込んだ…入る?…入る入る。だけど、冷気が回るかなってくらいスペースを占領してしまった。日頃からあまり詰め込んでないから、こんな時、良かったけど。こっちは取り敢えずこれで問題解決。あとは、これだ。
二つ比べて…小さい箱から開けてみようか。大きさの基準を見比べて判断したけど、考え方によっては、どっちが小さい箱に匹敵するのか、厳密には解らない。大きい箱だと判断したのは小さい方と比べての事。私が見ての判断だ。どちらも凄く大きい物では無い。
んー…単純に小さい方を開けてみよう。
外箱を開けると、緩衝材に守られた、更に小さなラッピングされた箱が入っていた…。手に取って綺麗なリボンと可愛らしい包装紙を丁寧に外した。
……白い箱。中に可愛いベルベットの箱。取り出し蓋を開けた。これは…、雪の華?…。こんなに小さいのに…繊細な細工の雪の結晶のピアス。それも穴を開けていない私に、マグネット式の物。多分これって…、各務さんで間違いないと思う。…カード。メリークリスマスと印刷されている下…。
『気に入らなかった場合も返品はなしですよ?持っていてください。各務』
…フ、やっぱり各務さんだ…。これは…あの時、一緒に行ったお店で各務さんは可愛いピアスを色々見ていた。真さん家からの帰り、ショッピングに行った時の店の物なんじゃないかと思った。…では。
…こっちの箱は、開けずに置いておこう。真さんからの返信はまだない。
【各務さん、有難うございます。こんなにして頂いて、このところの私は、各務さんにお気遣いして貰うばかりで。お礼がしたいと言ったら、これも仕事だと思ってくださいと、また言われてしまいますか?】
さっきの今だ。きっと携帯を見てる場合ではないだろう。何か贈りたいけど、聞いても送り先は教えてくれそうもない。…真さんに預けたら…。
今日はお店、まだまだギフトを求めて来るお客さんの為に開いているところも多いだろ。よし、行ってみよう。真さんが来るのは夜中だって言ってたし、変更も何も、連絡はない。
だから時間はたっぷりある。出掛けられる。