不審メールが繋げた想い
……え?
「え゙っ?!か、がみさ…」
「驚かせてしまいましたか?…貴女の生活の全てを私に見させてください。だからといって束縛はしません。心配は何一つないですよという意味です。詩織さん…、いつも一緒には居られない、限られた時間になりますが、私と一緒に居てほしい」
これは一体…。また新たなお芝居の要求なのでしょうか?今度は各務さんとどんな設定なのでしょうか。
「え?…どういう事ですか?」
確かに各務さんとなら…人と人として、共同生活が出来たらいいなとは思った。…でも、各務さんは。
「きょ、共同生活みたいなモノですか?」
「…共同生活?……そうですね、言ってみればそのようなモノですよね、結婚て」
…結婚。各務さんとなら本当の意味で偽装結婚?…。何か仕事の立場で、妻帯者という状況が必要になったのだろうか。中々まだ理解され難い……本命を…守るため…とか。…ん゙ー。
「そうだ!忘れない内に時計を…ちょっと待ってくださいね。取って来ます」
はぁ、いきなり……何だか、まだよく解らない話。考えようにも間が持てないから時計を取りに行った。引き出しのピアスの箱の横に並べて置いておいたのだ。
「各務さ~ん?…これ、お預かりしていた時計で間違いないで…」
あ、…うぉっ。後ろに来ていたとは思わなかった。女子らしからぬ声が出てしまった。
「…これ、着けてみて貰ってもいいかな」
「え?」
さっきの声、スルー?聞かなかったことにされてるのかな…でも恥ずかしい、いい歳をしてはしたなかった…。
そっと後ろから腕を伸ばし各務さんは開いたままの引き出しからピアスの箱を取り出した。
あ、それ。
返事は待たなかった。箱を開け、手に取り、私の耳に触れた。初めに右。…そして左。鏡を通して、時折、目を合わせながら着けられた。明らかに恥ずかしがっている自分がそこに居た。
「よく似合う…、ね?」
着け終わり両肩に手を乗せた。顔の直ぐ横で声がした。鏡越しの目が私を捕えていた。もう、恥ずかしさの限界です。顔を覆いたいくらい。この人の微笑みも奥様世代を簡単に撃ち抜いてしまいそう…。なんて色気のある表情をするんだろう。…無駄にドキドキしてしまう。
「…有難うございます」
…、あ、え?
後ろから腰の辺りに腕を回された。えー?心臓がドクンと大きく跳ねた。熱い血の流れを一気に感じた。耳たぶの下辺り、更に首に、唇が軽く触れ続けた。あ。ピアスに触れ、また首に触れた。少し…息が掛かった。…ちょあ…あ。各務さん?触れられた部分が一気に熱を帯び始めた気がした。間違いない…身体がズキンズキンと脈打つ。熱い…うるさい、何、何…各務さん…。一体……。私…。女なんです。…こんな…。あっ、回された腕、少し上に…お腹の辺りに回し直された。
「え、あ、か、各務さん?…」
「ん…嫌?……駄目?」
いー、いつもの各務さんじゃない。少し熱のある息がかかった…。え…あ~、また…耳に唇が触れた。じわじわと…駄目だ…駄目駄目、甘過ぎる。…嫌?というか、駄目というか…ですよ?…こんな。私がドキドキしているのは各務さんだから、男性だから。でも、各務さんは…。…各務さん?これは…、どう取れば…。サービス?いやいや……恥ずかしながら、私…、各務さんは男性だから、しかも、今、とても色っぽい攻撃を受け続けている。こんなのって、女として普通に反応してしまってますが…。でも各務さんは…。
「ぁ…嫌というか、ですね。あの、なんて言うか、各務さんは、えっと、女性には興味がないのでは…」
…ですよね?そう聞いてますよ?首に触れていた動きが止まった。
「ん……ん………はぁあ゙?」
「え゙っ!…え?」
び、びっくりした…。私のあげた声もだけど、各務さんのこんな素っ頓狂な声は聞いた事がない。初めてだ。いつも落ち着いていて、声だって低くて渋いのに。
腕は回されたままだけど、慌てて身体を捩り、振り返り、結果至近距離で向き合ってしまった。身を引くように少しのけ反り気味でドレッサーの縁に腰をもたれた。だけど、お陰で甘い攻撃からは一先ず免れた。
「あ、あのですね?初めて駅に迎えに来て貰う時に、真さんが…そんな事を…」
…違いますか?違わないですよね?え………違うのですか?え?どっち、どうなの…?
「…はぁあ?!…有り得ない…、真の奴…。あー、ごめん大きな声を…大丈夫だった?……ふぅぅ、なんて事を言ってくれてる…。有りもしない事を…はぁ…」
…はっ?有りもしない?
「え゙ーっ?!…はぃい?」
今度は私が妙な声を出す羽目になった。じゃ、じゃあ…。
「はぁぁ。確かに…。あの時、詩織さんとは厳密には初対面だし、男と女、一対一だ。しかも、車という密室だ。いきなり現れた黒い車に引き込まれるんだから、警戒しないようにする為に言ったんだろうとは思います。それは解りますが…だけど…はぁ…、何を言ってくれてるんだあいつは…」
各務さんは手で顔を撫で下ろし口を覆うと、悩まし気に鼻から息を抜いた。あ…じゃ、じゃあ…そうだと聞いていて、どこか安心していて、……仮眠するように泊めた事も、…朝まで一緒に寝たのも…。えーっ、それって…どうだったの?えー?大丈夫じゃなかったって事?!
私は、なんて、こ、とを…したの…って話です、よ?
「私は…一緒に寝たりして…、なんて大胆な事を…」
「フ。確かに、昔、真といつも一緒に遊んでた頃はそんな噂も立ったけど、俺は、バリバリ、"女性"が、好きなんだけどな…」
女性が、の部分、凄く強調された。
「え゙っ?!か、がみさ…」
「驚かせてしまいましたか?…貴女の生活の全てを私に見させてください。だからといって束縛はしません。心配は何一つないですよという意味です。詩織さん…、いつも一緒には居られない、限られた時間になりますが、私と一緒に居てほしい」
これは一体…。また新たなお芝居の要求なのでしょうか?今度は各務さんとどんな設定なのでしょうか。
「え?…どういう事ですか?」
確かに各務さんとなら…人と人として、共同生活が出来たらいいなとは思った。…でも、各務さんは。
「きょ、共同生活みたいなモノですか?」
「…共同生活?……そうですね、言ってみればそのようなモノですよね、結婚て」
…結婚。各務さんとなら本当の意味で偽装結婚?…。何か仕事の立場で、妻帯者という状況が必要になったのだろうか。中々まだ理解され難い……本命を…守るため…とか。…ん゙ー。
「そうだ!忘れない内に時計を…ちょっと待ってくださいね。取って来ます」
はぁ、いきなり……何だか、まだよく解らない話。考えようにも間が持てないから時計を取りに行った。引き出しのピアスの箱の横に並べて置いておいたのだ。
「各務さ~ん?…これ、お預かりしていた時計で間違いないで…」
あ、…うぉっ。後ろに来ていたとは思わなかった。女子らしからぬ声が出てしまった。
「…これ、着けてみて貰ってもいいかな」
「え?」
さっきの声、スルー?聞かなかったことにされてるのかな…でも恥ずかしい、いい歳をしてはしたなかった…。
そっと後ろから腕を伸ばし各務さんは開いたままの引き出しからピアスの箱を取り出した。
あ、それ。
返事は待たなかった。箱を開け、手に取り、私の耳に触れた。初めに右。…そして左。鏡を通して、時折、目を合わせながら着けられた。明らかに恥ずかしがっている自分がそこに居た。
「よく似合う…、ね?」
着け終わり両肩に手を乗せた。顔の直ぐ横で声がした。鏡越しの目が私を捕えていた。もう、恥ずかしさの限界です。顔を覆いたいくらい。この人の微笑みも奥様世代を簡単に撃ち抜いてしまいそう…。なんて色気のある表情をするんだろう。…無駄にドキドキしてしまう。
「…有難うございます」
…、あ、え?
後ろから腰の辺りに腕を回された。えー?心臓がドクンと大きく跳ねた。熱い血の流れを一気に感じた。耳たぶの下辺り、更に首に、唇が軽く触れ続けた。あ。ピアスに触れ、また首に触れた。少し…息が掛かった。…ちょあ…あ。各務さん?触れられた部分が一気に熱を帯び始めた気がした。間違いない…身体がズキンズキンと脈打つ。熱い…うるさい、何、何…各務さん…。一体……。私…。女なんです。…こんな…。あっ、回された腕、少し上に…お腹の辺りに回し直された。
「え、あ、か、各務さん?…」
「ん…嫌?……駄目?」
いー、いつもの各務さんじゃない。少し熱のある息がかかった…。え…あ~、また…耳に唇が触れた。じわじわと…駄目だ…駄目駄目、甘過ぎる。…嫌?というか、駄目というか…ですよ?…こんな。私がドキドキしているのは各務さんだから、男性だから。でも、各務さんは…。…各務さん?これは…、どう取れば…。サービス?いやいや……恥ずかしながら、私…、各務さんは男性だから、しかも、今、とても色っぽい攻撃を受け続けている。こんなのって、女として普通に反応してしまってますが…。でも各務さんは…。
「ぁ…嫌というか、ですね。あの、なんて言うか、各務さんは、えっと、女性には興味がないのでは…」
…ですよね?そう聞いてますよ?首に触れていた動きが止まった。
「ん……ん………はぁあ゙?」
「え゙っ!…え?」
び、びっくりした…。私のあげた声もだけど、各務さんのこんな素っ頓狂な声は聞いた事がない。初めてだ。いつも落ち着いていて、声だって低くて渋いのに。
腕は回されたままだけど、慌てて身体を捩り、振り返り、結果至近距離で向き合ってしまった。身を引くように少しのけ反り気味でドレッサーの縁に腰をもたれた。だけど、お陰で甘い攻撃からは一先ず免れた。
「あ、あのですね?初めて駅に迎えに来て貰う時に、真さんが…そんな事を…」
…違いますか?違わないですよね?え………違うのですか?え?どっち、どうなの…?
「…はぁあ?!…有り得ない…、真の奴…。あー、ごめん大きな声を…大丈夫だった?……ふぅぅ、なんて事を言ってくれてる…。有りもしない事を…はぁ…」
…はっ?有りもしない?
「え゙ーっ?!…はぃい?」
今度は私が妙な声を出す羽目になった。じゃ、じゃあ…。
「はぁぁ。確かに…。あの時、詩織さんとは厳密には初対面だし、男と女、一対一だ。しかも、車という密室だ。いきなり現れた黒い車に引き込まれるんだから、警戒しないようにする為に言ったんだろうとは思います。それは解りますが…だけど…はぁ…、何を言ってくれてるんだあいつは…」
各務さんは手で顔を撫で下ろし口を覆うと、悩まし気に鼻から息を抜いた。あ…じゃ、じゃあ…そうだと聞いていて、どこか安心していて、……仮眠するように泊めた事も、…朝まで一緒に寝たのも…。えーっ、それって…どうだったの?えー?大丈夫じゃなかったって事?!
私は、なんて、こ、とを…したの…って話です、よ?
「私は…一緒に寝たりして…、なんて大胆な事を…」
「フ。確かに、昔、真といつも一緒に遊んでた頃はそんな噂も立ったけど、俺は、バリバリ、"女性"が、好きなんだけどな…」
女性が、の部分、凄く強調された。