不審メールが繋げた想い
母親の月命日。俺は墓に来ていた。
「はぁ、母さん…。言わなくても何もかもそっちから見てるから解ってるだろうけど、俺は結婚、出来てないんだ。それどころか、初めから詩織さんの事が好きで、会いたくて会って、結婚したいと思っていたのに、それを上手く伝えられなかったんだ。情けないだろ?だから駄目なのよって、思ってるだろ?結婚したい人だから母さんにも会わせたかったし…。女性に対して不器用だからかな…初めから焦ったのかな。
言いたい事を、言わなくちゃいけないタイミングで言えて無いから、煮え切らない男みたいで…解り辛いよな、俺みたいな男の事なんて。…はぁ。言葉が足りな過ぎるよな。凄く好きなんだ、詩織さんの事が。それは、誤解のないように伝え直さなきゃ解ってもらえない。…母親相手に何言ってるんだろうな。
確かにあの人はファンだった人だ。今だってファンのままで居てくれてるようなんだ。俺が苦手なドラマ、凄く良かったって言ってくれたよ。…複雑だ。Yとしては嬉しい。俺としては苦しい。あのドラマ…、受けた時から苦しかったんだ。台本を読んだ時、柄にも無くやり切れなくて…ジレンマに泣いたよ。抱きしめたり、ディープなキスをしなくちゃいけなかったり、ベッドシーンも何度かあったんだ…。
…もう、二度としない。あれが最後だ。
母さん…、俺、俳優辞めてもいいかな。元々向いて無いと母さんも思ってただろ?俺は黙って立ってるだけしか出来ない男なんだよ。演じるなんて出来ない。
詩織さんの事、諦めるとか、忘れるとか出来そうにないんだ。母さんだから…俺の本質はよく解ってるよね?何も始まって無かったのに…。彼女はずっと、母さんの為に結婚相手になって欲しいと頼まれただけだと思ってるはずなんだ。俺の口からは何も話せて無いから。結果はどうなろうと、この気持ち、詩織さんにちゃんと話したいんだ」
…コツ。
「あ……詩織さん…」