甘い天秤
その言葉でざわざわしていた会場が水を打ったように静かになる。そんな空気の中、私は一人息を飲む。


周りの人たちがキャーと声をあげると、私の胸がこれでもかと騒ぎだした。


「もう!凛さん困ってるじゃないですか!」


秀人くんの声が助け船を出してくれた。その声を聞いて少しホッとしていると、秀人くんがきたので周りの女の子たちはキャッと小さくざわめきだす。


「秀人くん、ハーレムからよく抜け出せたね!」

「もう!綾さん!ハーレムって…。故意に僕をおいていったでしょ!?」

「だって、さすがにあの中には入れないわよ!たまにはいいんじゃない?だって秀人くん、いつもは凛にべったりだし。」


綾は悪びれる事もなく、さらにそんな事をさらっと言っている。


「べったりって…。綾さん!凛さんに張り付いてないと、誰にとられるか分かりませんからね!」

とられるって……。秀人くんのその言葉に少し動揺していると、笹川さんが小さな声で


「とられるって、…まるで自分のものみたいに…。」


え?っと思い、笹川さんと秀人くんを交互に見ると睨みあっているような…二人とも芸能人のような顔で睨んでも、綺麗に見える……
そんなことを一人で考えていると、笹川さんに話しかけられた。

「凛さん、この会終わったら電話ください。」

そういいながら、名刺を差し出している。ほとんど無意識でそれを受け取り頷いた。

「良かった!じゃぁ待ってます。」

「あっ、分かりました。」

短い会話が終わると笹川さんはウチの課長のところに、行ってしまった。
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