甘い天秤
離れていく後ろ姿を見て、手の中にある名刺に目を落としたところで、


「キャー!スマート!笹川さん、プライベートの番号あまり教えないって有名よ!」

「え?私、いいのかな?」

「何言ってるの!あんただから笹川さんも教えたんでしょ!?」

「……」

「あー、笹川さん可哀想……。そして、秀人くんもね」

「僕、うだうだしてられないですね……」


なんだろう?と思いながら、少し温くなったビールに口をつけた。


その後の時間はお昼におきた、笹川さんとの事を綾たちに説明したり、営業の人たちとの交流も出来、穏やかに過ぎていった。


会もお開きになり、周りは二次会の話が持ち上がっている。


「凛はどうする?」

「私は帰ろうかな」

「そうね。笹川さんも、電話待ってるだろうし。」


ニヤニヤ顔の綾の言葉に軽く返事をしながら、電話で何を話したらいいのだろうと思い、また胸がざわめきだす。


「え~?!凛さん、二次会行かないんですか?」

「あっ、秀人くん。ごめんね。またゆっくり行こうね!」

「絶対ですよ!あっ!帰るんだったら、送ります!」

「ううん!まだ早いし大丈夫。またね。綾もまた来週、会社で!」

綾たちとお店の前で別れ一人、駅へと足を進めた。
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