甘い天秤
あんな事とは、私の記憶も乏しい幼い頃の話だ。


別の容疑で逮捕された男が、私を誘拐しようと画策していたらしく、それがわかった警察が知らせてきたのだ。


その話を聞いた両親は、もし実行されていたらと震え上がり、それから私を公にしないように、隠してきたのだ。


だから、そのあとに知り合った人たちは、長谷川建設社長の令嬢であることは知らなかった。


そんな事もあり、彼氏が出来ても、実家の事を話すとうまくいかず、友達ともギクシャクしたりと、上手に人間関係を築けなかった。


そんな学生時代を送ってきたからか、社会人になってからは、自ら家の事を話さなかった。


今回のパーティーは私にも拒否出来ないのだろう。


現に、その話をした両親はどこかキラキラした笑顔を浮かべ嬉しそうにしている。


そんな顔をされたら、断れない。しぶしぶ、了承の意を示した私の顔が少し雲ってしまったのは、許してほしい。
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