甘い天秤
「実はうちの会社の社長は、俺と秀人の父親なんだ」

「え?あっ!そうだ!社長の名前は織田 宗重さんですもんね」

「うん。秀人は父に、俺は母に引き取られたからね」

「そうなんですね」

「だから、もし凛の両親が政略結婚をするようにと勧めてきても、俺か秀人なら問題ないと思って。出来れば、俺を選んでほしいけど」

「えっ?結婚!?」

「うん。俺は、これからの未来は凛と一緒がいいしね」


すごくキラキラ、眩しい笑顔でそんな事を言わないでほしい。恋愛経験が乏しくて、自分の気持ちがまだハッキリしていない私は、どんな反応をしていいか分からない。


「ごめん……。今そんな事を言われても戸惑うだけだよね。わかっていたのに……焦ってしまって……。でも、俺の気持ちは分かっていてほしい」


「はい……。私こそすみません。こんな風に言われたのは初めてで…。自分の経験のなさを悔やみます……。」


「そう?少なくとも俺は、そんな凛を愛しく思うし…むしろ、嬉しいよ」


ストレートすぎる……。


「ごめん……。余計困らせちゃったね」

「いえ、伊織さんの言葉は素直に嬉しかったので……。ありがとうございます」

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