甘い天秤
「え?……凛、家族と暮らしてるの?」

「私、独り暮らしだよ」


私の言葉を聞いて余計、絶句している。そんな綾は珍しくて、私はクスッと笑ってマンションのエントランスに入ろうと促す。

「おかえりなさいませ。凛様」

「ただいま。滝さん。紹介します。こちら、同じ会社の佐伯 綾さん」

私が紹介すると、綾は小さく会釈した。

「そうでございますか。佐伯様、今後ともよろしくお願い致します」

「いえ、こちらこそ」

「じゃぁ、行こうか」

「あっ、そうね」

「では、滝さん、また」

私がそういうと滝さんはにっこりと微笑んでくれた。


私の住むマンションのエレベーターは三基あり、ひとつは1階から25階までて、もうひとつは、26階までノンストップでいき、38階まで。最後のひとつは私の住む39階に直通である。39階には私しか住んでないから、私専用みたいなものだ。


エレベーターの前の認証パットに暗証番号を入力し、カードキーをかざす。


私しか乗らないため、すぐにエレベーターは開く。

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