甘い天秤
「そういうことか……。凛さんは兄貴を選んだんだね…。」


その声を聞いて、ドキッとする。秀人くんだ。


驚きすぎて声がでない……。


「秀人、やっと来たのか。立ってないで座りなさい」

「え?……伊織さん…どういう事ですか?」


秀人くんはしぶしぶ席につく。


「二人揃ってる方が、凛も話しやすいと思って呼んでおいたんだ」


なんて酷な事を……秀人くんに振られる準備は出来ていない……。


そうだった……伊織さん、腹黒いんだった。


伊織さんなら兄弟だから、秀人くんと一緒にいた女性の事を知っているのかもしれない。


そうだとしたら、あまりに意地悪だ…。私の振られるのを分かってるんだから…。


「さぁ、凛の答えを聞かせて」

「えっ……と…」

「凛さん、わざわざ言わなくていいよ。凛さんの気持ちはわかったから……じゃぁ、俺帰るね」


えっ?ちょっと!秀人くん、勘違いしてない!?

……してる!……引き止めなきゃ!!
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