甘い天秤
パ、パニック!!振られると思ってたのに……いや、まだ安心は出来ない…。ちゃんと聞かなきゃ。


「あ、あの、この間一緒にいた女性は…?」


秀人くんが答えるより先に、伊織さんの声が聞こえた。


「お見合いさせられたんだよ。先方があまりにしつこくて、会社にまで押し掛けてきてね。秀人は次期社長だから」

「え?……伊織さんは?」

「俺は会社経営には興味ないからね。……でも、会社にこのままいられないな……凛に振られてしまったし…。そのまま何事もなかったように働けるほど、神経図太くないし…。」

「っ!すみません…。」

「凛さん、謝る事ない!兄貴、そんないい方するなよ!凛さん、本気にするだろ!プロジェクト終わったら海外に転勤の話あっただろ!」

「このくらい、いいだろ!最後の悪足掻きだよ!」


あっ…。兄弟喧嘩してる…。


「じゃぁ、凛。俺、お邪魔だろうから帰るな」

「あっ!伊織さん!ごめんなさい!!……ありがとう!!」


伊織さんにはきちんと話せなかった。でも、この人のことだ。全部わかった上で、秀人くんを呼んでくれたんだろう。


< 48 / 64 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop