甘い天秤
eleven
ーー
今日は父が社長を務める会社のパーティーの日。前の日から実家に泊まり慌ただしく準備をしている。


秀人と付き合ってもうすぐ三ヵ月がたとうとしていた。順調に交際も進み、今日のパーティーにも私たちが務める会社の社長と出席すると言っていた。


「凛ー!!準備できたかしら?」


母が私の幼い頃から使っていた部屋のドアを開け、顔を覗かせる。


「お母さん。こんな感じでいいかな?」


私はこういう場に慣れていないため、母のお抱えのメイクさんに髪とメイクをしてもらい、父が用意してくれたドレスを見にまとって、母に見せる。


「きゃー!!予想以上よ!!……凛、美しいわ……。さすが私の娘ね!…なんちゃって!」


フフフっと母が笑う。私の緊張を和らげてくれているのがわかる。……いつまでも、心配させないようにしなきゃ!今日はパーティーが終わったら、結婚を考えている人がいることを報告しようと心に決めた。


「お母さんもいつにもまして、綺麗…。」


薄い紫のタイトなロングドレスを着ている私に対し、母はボルドーのロングドレス。いつもは可愛らしい母が、大人の女性の色気を纏、一段と美しく見える。私もこんな年の取り方をしたいと思った。
< 58 / 64 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop