空に散った君の瞳
「神様って何?」


何もかも呑み込んでしまいそうな、ぽっかりと口を開けた真っ暗な空に、淋しそうにぽつんと浮かんでいる満月の下で、いつの日か、君は僕にそう訊ねたよね。


「えっ?」


江戸川の河川敷で、ぼーっと座っていた僕は、完全に君の言葉を聞き逃した。


それを見て、君はクスッと笑った。


いや、自分の質問に笑ったのかな。


「神様って何なのかな。善良な天使なのかな……それとも残酷な悪魔?」


君の瞳が、いたずらっ子であるかの様に揺れていた。


「『神様はいるの?』とかじゃなくて?」


うん、と君は頷いた。


ふわっと甘い香りが、僕の鼻を撫でる。


「……そんなの、僕が知ってると思う?」


僕が苦笑すると、君も苦笑して


「思わない」


そう言った。


「さっき観た映画、そんなに面白かったの?」


僕は君に訊ねた。


君が観たがっていた映画だった。僕はあんまり興味がなくて、内容は殆ど思い出せなくて、そしてそれを今でも後悔しているけれど、なにかの神様が出てきた事だけは覚えてる。


うーん、と君は唸った。


「面白かったけど、なんか下らなかった」


「なにそれ、期待外れは今日食べた昼飯だけにしてよ」


そう僕が笑うと、君も笑った。


その後暫く、僕たちの間に会話は無かった。
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