ハッピーエンドじゃ終われない
悪夢
「じゃあ今日の会議はここまで。このあとみんなでお昼ご飯行ってから練習するから、残っておいてね」
部長は予定の時間より15分早く終わりを告げる。
私は大学で合唱サークルに所属していて、週に1回部内会議があり参加する。
練習は週に1、2回あるが、今は夏休みなので練習はあまりメンバーが揃わない。
「香苗!このあとのご飯行くよね?」
合唱サークルのメンバーで、同じ学部の友人である朝比奈美織(あさひなみおり)が私を呼び止める。
「あー…ごめん。私いまから行くところがあるの」
私は机に広げたノートと筆箱を鞄に片付け、腕時計を見る。
時刻は11時45分。
これなら間に合うかな。
「えーそうなの?もしかして彼氏できたとか?」
「違うよ。今からちょっと大事な用事が…ね」
「…そうなんだ。じゃあ会議も休めばよかったのに。香苗は本当に真面目だね」
「そんなことないよ。今から向かわないといけないからこのあとの練習出れないって、美織から部長に言っといてもらって良い?」
「わかった言っとく。じゃあ今度の練習のあとは、二人でご飯行こうね」
「もちろん。今日はごめんねよろしく!」
私は美織に背を向け、会議室をあとにする。
大学の入学式のとき、美織が私に話しかけてくれたときからずっと仲が良い。
部活も美織に誘われて合唱サークルに入部したほどだ。
彼女はいつもシンプルな服装、メイクをしているのにお洒落。
男性からも女性からも好かれる美人だ。