ハッピーエンドじゃ終われない
私が大学の校門を出ると、大学名が書かれたプレートの前に立つ女性が目にはいる。

「京華、お待たせ」

私が話しかけると彼女は笑い、にらめっこしていた携帯電話を鞄へとしまう。

「ううん、じゃあ行こうか」

私は彼女の左側に並び、目的地の方向へと歩き始める。

「これなら結構早く着きそうだね」

「そうね」

そんな会話を交わしたあと、私たちの間にしばらく沈黙が流れる。
聞きたくても切り出せない。
そんなもどかしい時間が流れる。

「…あの、さ」

意を決して、私は京華に切り出す。

「…うん?」

京華も私が何を切り出すか察し、こちらを向かず言葉をつまらす。

「睦…さ、何で亡くなったの?」

京華から睦が亡くなったと連絡をもらった日、私は驚きのあまり何も言葉がでなかった。
京華もあまり長話をしたくない雰囲気だったので、私たちは睦のお葬式の日程と、待ち合わせの時間だけを話しそのまま電話を切った。

「車に轢かれたらしいの」

「事故、だったのね」

そう尋ねると、京華はさらに苦い顔をしてうつむく。

「…それがね、そうじゃないらしいの」

「え?」

事故じゃない?
京華の発言に、私は思わず足を止める。
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