ハッピーエンドじゃ終われない
『いいじゃん!イケメンっていうのは重要なことだよ!じゃあ次はみちるね!』

『みちるは白馬の似合う王子様みたいな人がいい~!』

みちるは目を輝かせながら、うっとりとした表情で答える。

『関ジ○ニみたいな?』

『もう関ジ○ニいいから!』

アイドルを推してくる睦に彩女は再び突っ込みを入れる。
そんな漫才をしているかのような二人を見て笑い、私たちは和やかな雰囲気に包まれる。

『じゃあ弥生は?』

睦は私の隣に座る弥生に話題をふる。

『つぎ私?恥ずかしいな~』

弥生は顔を赤らめ、恥ずかしいのか間をおいてから口を開いた。

『私ずっと気になる人がいてさ…2組の井上(いのうえ)くんなんだけど…』

弥生はさらに顔を赤くし、両手で顔を隠した。

『井上!確かに格好いいよね!勉強もできてスポーツもできてイケメンで性格もいい。完璧だね』

睦はうんうんと首を縦にふり頷く。

弥生が井上くんを好きなのは前から知っていた。
井上くんとすれ違ったあと彼の後ろ姿をずっと見つめていたり、グラウンドにいる彼を教室の窓から眺めていたりと、弥生は彼にずっと片思いしている。

彼を見つめる弥生は、まさに”恋する乙女”という言葉が似合う女の子だった。

『好きになったきっかけは?』

みちるが弥生に問いかける。

『中1のとき同じクラスだったんだけど、放課後の掃除の時間に黒板を掃除してたの。でも私身長が低いから上の方が届かなくて困っていたら、黒板消しをすっと私の手から取って”手伝うよ”って』

『それでそれで?』

みちるや睦は前に乗りだし、続きを急かす。
< 20 / 54 >

この作品をシェア

pagetop