ハッピーエンドじゃ終われない
それから2日後の休み時間のことだった。
お手洗いに行ったまま帰ってこない弥生を心配し、私は様子を見に女子トイレに向かっていた。

弥生、お腹でも痛いのかな。

女子トイレのドアを開けようとドアノブに手をかけたとき、中から声が聞こえてきた。

『…あんた目障りなのよ』

私はドアノブにかけた手をぴたっと止める。
鋭く尖った刃のような、冷たい声。
彩女の声だった。

『彩女ちゃん…』

弥生は弱々しく泣きそうな声で彼女の名前を呼ぶ。

『呼ばないでよ気持ち悪い』

彩女はすぐさま吐き捨てる。

『あんたに井上くんは無理よ。井上くんは私のものになる予定だから』

『……』

彩女も井上くんを狙っていた。
そう知ったのが、トイレの外から聞いた彩女と弥生の会話だった。
好きな人が被ってしまい彩女の反感を買ってしまったようだ。

『だから、井上くんに近づかないでよね。あんたみたいなブスが振り向いてもらえるわけないんだから』

彩女は高笑いをしながら、トイレのドアを開けた。
私は逃げるひまもなくドアの前から一歩も動けず、ばっちり彩女と目があってしまった。

『あ…』

私は彼女の視線に背筋が凍るような恐怖を覚えた。

『…わかってるわよね?あの子を助けたら、あんたも巻き添えだからね』

そう良い放って、彼女は私の横をすり抜けていく。
助けたら、巻き添え…?

この言葉の意味を、後々痛いほど知ることになる。
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