ハッピーエンドじゃ終われない
『え…』

『ごめん…助けられない』

彼女は私から目をそらしてうつむいたまま、静かにそう言った。

『そう…だよね。そんなことしたら、今度は京華がいじめられちゃうもんね』

誰でもそう答えるに決まっている。
助けたら自分がターゲットになるのはわかりきっているのだから。

『…そうじゃないの』

彼女は苦しそうな表情でそう答えた。

『え?』

『助けられない”理由”があるの』

”理由”…?

『”理由”…って?』

『…言えない』

彼女の表情がますます険しくなっていく。
彼女はとても苦しそうで、聞いてはいけないことだと察した。
だから私は、その”理由”について聞くことができなかった。

『そっか…ごめんね、引き止めて』

それ以上、なにも言えなかった。

私、どうしたら良いのだろう。
私はなにもできないまま、弥生がいじめられているのをじっと指をくわえて見ているしかなかった。

いじめが始まって1ヶ月後。
弥生はとうとう学校に来なくなった。

そしてその1ヶ月後。
弥生が転校するという知らせが、担任から告げられた。

私はずっと後悔している。
何もできない弱い自分に嫌気がさした。
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