ハッピーエンドじゃ終われない
「弥生は私たちを恨んでいるかもしれないけど、復讐なんてする子じゃないと思うの」

私が知っている弥生は、お薦めの恋愛小説の内容を楽しそうに話してくれたり、照れながら片想いの井上くんの話をしてくれたり、控え目なところはあるけれど相手に気を遣えるいい子だった。
そんな彼女が人を殺すだなんて…想像ができない。

「だいたい彩女も睦も…自殺、って警察が言ってるんだよね?信じられないけど」

「そう聞いたよ」

「じゃあきっとそうなんだよ。そうじゃないと警察の目を欺いて、自殺に見せかけて殺したってことにならない?そんなの無理だよ」

「そう…なのかな」

「そうだよ!彩女と睦は偶然、同時期に亡くなっただけだよ!そうに決まってる…」

「香苗…」

私は弥生を信じたい。
そう切に願った帰り道。

久しぶりに会ったら、彼女に謝りたい。
許してくれないかもしれない。
それでも、謝らず一生後悔するよりましだ。
弥生、いま何処に居るのだろう。

私は青く染まった空を見上げて、彼女を思い出す。

弥生じゃないよね?
弥生は自殺に見せかけて人を殺すだなんてできないよね?

彼女を信じようと決めたその日の夜。
こんなにもすぐに期待を裏切られることになるだなんて、思いもしなかった。
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