ハッピーエンドじゃ終われない
あのあと、京華は救急車で病院に搬送された。
長時間の手術に及んだのち、京華は一命をとりとめた。

しかし京華は目を覚まさなかった。
医者は、精神的なショックで目覚めない可能性が高いと言っていた。
私に”秘密”を知られてしまったから、私に会いたくないのだろうか。
会いたくないから、目を覚まさないのだろうか。

窓際まで足を運び、遠くの空を見つめる。
私は、この短期間で多くの人を失った。

美織はあのあと逮捕され、一時はニュースで報道された。
確か1週間後から、裁判が始まると桜井刑事に聞いた。
取調室では、自分のしたことを洗いざらい話したらしい。
重い刑になるのは間違いないと言っていた。

私だけ無傷で、何もできていなくて。
私も死のうか。
そう考えたこともあった。
それを桜井刑事に言ったら、こう言われた。

『死ぬのは簡単だ。だから償いたいという思いがあるのなら、罪を背負ったまま生きていきなさい』

死ぬのは簡単。
それこそ現実に背を向けて、また逃げ出すことになる。
もう逃げてはいけない。
向き合わないといけない。
だから私は生きようと思う。
皆の分まで。

京華はきっと目覚める。
目覚めるまで待とう。
明日、明後日、明明後日、1年後、10年後でも、私は待ってるからね。

「また来るね」

そう言って彼女に笑いかけた。

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