暁月夜




楽しむことを目的とするなら他の客のように音にのり声を出し身体を揺らすんだろう。そういうことがしたい訳じゃない。


"惹き付けられている"という言葉を転がしながら何かを考えだした男性を今度は私が見つめる。



この人、誰なんだろう。


今さら聞いては駄目だろうか。ぼんやりとモヤがかかったような不確かな記憶。



思い出す兆しは見えない。



「……そっか。じゃあ最後にひとつ。なんでいつも最後の曲の前にライブハウスを出ていくのかな」


「たとえ一週間後にまた姿を見れたとしても、彼の口から"終わる"という言葉を耳にしたくないからです」







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