暁月夜
そういわれてやっと、なぜこの男性を見たことがあったのかを理解した。
人間の"意識をする"という力は大きい。意識するしないでこうも差が生まれる。
私はいつも彼しか見ていない。彼の姿が私を惹き付けてやまないから。
私はあの小さなライブハウスに couragitの音楽を聞きに行っているのではなく、彼の歌う姿を見に行っている。だからその周りで演奏している人を意識することも覚えることもなかった。
勿論、視界には入っているわけでぼんやりと見たことはあると記憶されるのだが、意識していないがゆえに明確に記憶されることがなかった。
「……すみません」
さすがにどう言うことも出来ず、謝るしかない。
そもそもcouragitのメンバーが私に用があるとは思わない、という言い訳は受け入れられるだろうか。