暁月夜




「いや、謝らないで。また来てね」



この夜に似合わない爽やかな笑顔を浮かべて去っていたタクさん。


あの質問をするということは、彼の場所から私の様子が見えているということ。

ライブ中あんな行動をとることを知っていながらまた来てとチケットを渡すタクさんは何を考えているんだろう。


物珍しいのかもしれない。


ただ、これであの行動に正式に許可が出たということで心置きなく彼を見ることができるわけだ。



不思議な夜だったと、私はこの小さな変化を受け入れた。



この夜から毎週、最後の一曲の前で私がライブハウスを抜け出す度に呼び止められ、タクさんと話をし家まで送ってもらうことが、変わりなく過ごす出来事として加わることになった。





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