拝啓、花の小瓶へ。

三月。

別れの季節と呼ばれるそれは、まだ幼稚園の幼い私に別れを持って来た。

大好きだった幼馴染の男の子との別れ。いっつもひっついて、いっつも困らせていた子。

大きくなったら、ってずっと言ってたと思う。

親の用事で遠いところに行かなきゃいけないのよって言われた時の、泣き出した私の顔。見てみたい位。


だから、ずっとおぼえててねって小瓶を渡した。

相手にとっては小瓶と同じ位小さい思い出かもしれない。小瓶だって捨ててるかも。

だけど私はずっと覚えてる。絶対忘れたくなかったから、絶対忘れられなかった。

私の今までの恋も青春も、君を想って終わっちゃったんだよって、その責任とってよって。

そんなことできたら、どれだけ幸せだろう。


ねえ、悠くん。

「何でマスク外さないの?」

貴方に、バレたくないからです。

結局そんなうまく行かないよねってわかってるから、寧ろあの子かって引かれるから、隠したいんです。


黒板に書かれた、春川はなの文字。

自己紹介の時、ちょっとだけこっち見てたから、

あの小瓶探しちゃったんだよ。




「_____」

「…え、と…」

「ハリボテでも良いし、何言われて断られても良い。」

「…ごめんなさい」

悠くんが思い出してくれることを期待して、また気持ちに答えられなかった。

いつかこっちに帰れるからって、前の学校でも断ってたなぁ。
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