拝啓、花の小瓶へ。
放課後、オレンジに染まる図書室で本を開く。
私はまた誰かの思いを拒んだんだなぁ。
夕日のせいで赤い私の顔は、告白を受けて照れている様に見えるだろうか。
実際そんな理由もあるかもしれない。でも、心の中は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
まだ人は残っているけど、大体受験生が勉強しているだけみたいだ。
私は図書室で本を読むことが日課。
登校してからチャイムが鳴るまで、ちょっとしかない時間だったけど、それでも私の活力となっていた。
今日は時間があったし、朝読んだものもすごく良いところだったから放課後も少し読んでいくことにしたのだ。
やっぱりこの話は素敵。再開した人は自分を覚えててくれるんだもん。
口角を緩めて本を見ていると、騒がしい声が聞こえてきた。
「でさー!ユキまた和馬の話ばっかしてんの!」
「う、うるさいっ!」
「和馬、さっき教室にいたよー?」
「えっ…行ってくるね!ありがと!」
「あははは!ユキかっわいー!」
和馬…?
今日、今私に告白してくれた人は、
私は。
「ごめんなさい…」
普段よりずっとか細くて高かった私の声は聞こえてはいないだろうけど。
私は、伝えてくれた人だけじゃなくて、その人が好きな人の気持ちも踏みにじっていた。
それでも悠くんが好きだから。自分を殺せない私に腹が立つ。
ユキって人が帰ってきたらしい足音と、押し殺した泣き声。
その中で、鮮明に聞こえた声。
「__でも、その人にもっ私とおんなじ様に、好きな人がいたんだよね…」
「幸せかな、その人しあわせかな…っ」
空は暗くなり始めていた。
これじゃダメじゃないか。
ずっと持ってる小瓶に手紙と花を入れて、あの人の下駄箱にそっと置く。
また少し暗くなった空に浮かぶさざ波の様な雲。その向こう側に、まだ明るい空が暖かく笑っていた。