Phantom (ファントム) ~二人の陽人〜
電話を切った後のホテルの室内は、とても空気が重苦しい。
「美希…今の話は現段階だからさ…
きっと、他の友達とか仕事関係の人とかで、まだ連絡取れてない人もいると思うよ。
その誰かが急病とか、事故に遭ったとか、そんな理由で…。
多分そこに行ってるんだよ。まだ今はバタバタしてて連絡できないだけじゃないかな」
「うん、そうだよ。まだ何日も行方不明って訳じゃないんだからさ…。
明日になったら、“ 誤解を招くような行動をしてすみません ” って帰って来るよ」
「そう…だよね…。まさかこんな騒動になってるなんて思ってなくて、ハルもアキも、すっごい怒られたりして…」
美希は無理矢理作り笑いをしてみせる。
「ホントごめん!せっかくのクリスマス・イブで、早めの卒業旅行だったのに、重い空気になっちゃったよね?
ハルの身内でも何でもない、一ファンの私が心配しても、どうにもならないもんね。
明日は、ハルの無事を祈りつつも、ちゃんと楽しむから!
ごめんね。おやすみ!」
美希は明るくそう言うと、ブランケットを頭から被った。
梨香と菜穂子はかける言葉が見つからず、「おやすみ」と一言だけ呟くように言うと、部屋の電気を消した。