Phantom (ファントム) ~二人の陽人〜
あの重い扉の向こう側からこの森に放り出されて、いったいどのくらい森の中を彷徨い、走り続けていたのかわからない。
見つけられる確証なんか、どこにもなかった。
道と呼べるものさえない。
見渡す限り、ただ木が乱立しているだけの場所。
目印なんてどこにもないし、そもそも、ハルがこの森に紛れ込んでいるのかも、わからなかった。
息は切れ、冬だというのに汗をかき、何度も転んだり、木の枝に打たれたせいで、服はあちこちが破れ、枯葉の欠片や土にまみれている。
コウモリの羽で切った掌の傷は、更に何度も傷ついて、もう感覚もなかった。
それでも…
やっとハルを見つけた。