Phantom (ファントム) ~二人の陽人〜
ダンスのレッスンが終わり、スタジオのドアを出ると、何やら外が騒がしい。
「キャーッ!ハル、こっち向いて〜!」
「ハル、握手してーっ!」
あ〜ぁ…。
雑誌の撮影があるからと、急いで出て行ったくせに、何捕まってんだか…。
アキは軽く溜息をつき、立ち止まる。
「キャーッ!アキもいるぅ〜!」
ハルを取り囲んでいた女の子達の半分ほどが、今度はアキの方にも押し寄せて来る。
…って、…そりゃいるよ。
キミ達、今日ここで、イベントの練習だって調査済みで出待ちしてたんだろ?
声には出さず、心の中で呟いてみる。
だけど本音では、有り難いと思う気持ちはちゃんと持っている。
数年前までは、こんなふうに騒がれる先輩タレントを尻目に、一切注目されることも、行く手を塞がれる事もなく、スルーできていたんだ。
「自分達もいつかは…」
二人とも、そんな悔しい思いをバネに頑張って来た。
女の子にモテたい、とかそういう事ではなく(全くなくはないが…)この世界で生きていく覚悟を決めたからには、認められたい、と切望していた。
知名度が上がって来た…という事は、少しは認められて来た証でもある。
単にキャーキャー騒がれるだけでなく、
自分が出演した作品に対しての感想だったり、感動を伝えてくれたりすると、頑張って来た甲斐があったと思う。
感謝の気持ちは忘れたりなんかしていない。
でも今は…。