Phantom (ファントム) ~二人の陽人〜
ハルの右手が、アキの頬に力なく伸びて、涙をそっと拭った。
ハルのしなやかで長い指先は、ゾッとするほど冷たかった。
「アキ…。泣く…なよ…。ね、笑って…。
俺、お前…の…クシャッとした、無防備な…笑顔…何より好き…だった」
アキは必死になって笑顔を作ろうとするが、どうしてもうまく笑えない。
「アキ…の唇…温か…かったな…」
ハルの指先が、アキの頬から唇に移動し、唇をそっとなぞった。
「ハル…ハル…」
アキはハルの手をそっと握り、愛しい指先にキスをしながら名前を呼んだ。
「アキ…俺、お前…と…出…逢えて…良かっ…た…。あり…が…と…ね…」
最後の力を振り絞ってそう言うと、ハルは笑顔を見せ、そしてその手は、ドサッとアキの膝の上に落ちた。