Phantom (ファントム) ~二人の陽人〜


「それより、二人は食事を終えてから、タクシーで帰る時に追突事故に遭ったって、練習前におっしゃいましたよね? 
ごく軽いムチウチ程度とかそういうことかと…。違うんですか?
事故なんかじゃないんですか?!」

「嘘をついてすまなかった。
しかし、昨日の夜は、何かの事情があって、一時的に居なくなっただけだと思ったんだ。
すぐに解決する、戻って来ると思っていたんだ」

「居なくなった…?いったいどういうことですか?…」

青木の困惑の表情に、更に影が差す。


「わからないんだ…何も。
ハルはその約束していたと思われる店で、席についてすぐ姿を消した。
アキは、その店の前の横断歩道で目撃されたのが最後だ。
それっきり二人共、全く連絡が取れなくなってしまった。

取り敢えず、明日のリハが始まる前まで待とうと思う。でも、もしも戻って来なかったら、ライブをどうするか決断しなければならない。
そうなれば、もうみんなに隠しておく訳にはいかないから、事実を話すしかないと思う。
きっと何か事情があるんだよ。
明日には戻って来る…そう信じたい」


思いも寄らない告白に、青木の頭の中は混乱し、椅子に深く座って呆然としたまま、暫く動くことができなかった。

< 139 / 228 >

この作品をシェア

pagetop