Phantom (ファントム) ~二人の陽人〜
第三章
1. 闇と光
真っ暗な闇の中で、泣き喚きながら必死にもがいていた。
声は枯れ、身体が壊れそうなほど、泣き叫んでいた。
なのに自分のその声は、暗闇に吸い込まれて聞こえない。
まるで自分の心と身体の中だけで、暴動が起きているみたいだ。
誰もいない。だだ一人…。
何も見えない。
何も聞こえない。
その暗闇に、頭上から一筋の光が届いて来る。
けれど、それはスポットライトのようなものとは全く違い、あまりにか細く、儚い光だ。
いくら上に向かって手を伸ばしても、その場所はとてもとても遠い…。
「・・!」
遥か彼方から静寂のトンネルを伝って、何かが聞こえた。
「アキ?!」
誰かが俺の名前を呼んでいる?
…ハル?
…確かにハルの声だ…
いや…でも、そんな筈はない。
だってハルはもう…
「アキ!アキ、目開けろ!」
確かにハルの声だ。
…嘘だ!
…ハルが… 生きてた?!…
…本当に?!…
…良かった…
ハルが…… 俺の名前を呼んでいる。