Phantom (ファントム) ~二人の陽人〜
「アキ!大丈夫か!」
ハルはアキの肩を掴んだまま、不安げな表情で目の奥を覗き込む。
「…ハ…ル?」
ついさっき、暗闇の中で考えていたことと、
その前までいたであろうと思われる不思議な世界と、
そして今居る現実との狭間で、混乱する頭の中…。
何一つ理解できないまま、アキは痛む頭を振りながら、起き上がる。
「どうしたんだよ?こんなに泣いてまで、うなされて…。
余程悪い夢でも見たのか?」
ハルはベッドの端に座り、涙でグシャグシャに濡れたアキの頬を、大きな掌で拭った。
「…夢?…」
…だったとしたら、とんでもない悪夢だ。
いったい、どこまでが現実で、どこからが夢で…
そして、どうして今、こんなふうにハルの部屋に寝ているのか、全く訳がわからない。
いや、いっそ、本当に全てが夢だったというのだろうか?