Phantom (ファントム) ~二人の陽人〜
…けれど…
アキは、涙で濡れた瞼や頬を掌で拭って、大きく息をする。
ハルが生きて、ここにいる。
悪い夢から覚めた、
これが、今が、
紛れもない現実…
そう思えば、もうそれでいい。
「大丈夫だ、こんな傷」
アキは瞼の裏が熱くなってしまうのを感じ、それを悟られたくなくて、ハルの首に手を回し抱きついた。
「アキ…」
ハルは少し動揺したようにビクッとしたが、すぐにアキの背中を優しく抱き返した。