Phantom (ファントム) ~二人の陽人〜
『clair de lune』(クレール・ド・リュンヌ)の店内では、仕込みや準備の手を止め、従業員達が事務所のテレビに釘付けになっていた。
「解決して良かったですね…。二人共、無事で何よりです」
「本当だよな。警察沙汰になるなんて思ってもみなかったから、どうなることかと…」
「店長、やっと肩の荷が下りましたね。二人のこともそりゃ心配だったでしょうけど、何かあったら、店のイメージダウンにも繋がりますしね」
従業員に声をかけられ、店長は腕を頭の上に上げてグーッと肩を伸ばし、大きく息をした。
「本当に良かった。やれやれ…だな。
しかし、あのデイビッドさんがなぁ。
温厚そうな紳士に見えたがな。しかし、まだ見つかってないんだろ?
どこへ消えたんだろうな。
あの新人くんもなぁ…。甥っ子とかそういうのじゃなくこの事件に加担してたってことなんだろうか。
結局どこの誰だったんだか…」
頭の中で少し考えを巡らせていた店長だったが、気持ちを切り替えるように “ パン! ” と手を叩いた。
「さ!そうのんびりもしてられないぞ。準備だ、準備!」
従業員達は穏やかな表情で、それぞれの持ち場に散って行った。