Phantom (ファントム) ~二人の陽人〜
どちらからともなく抱き合う姿勢になっていた。
お互いの命が確かにここに存在していることを、体温で感じていたかった。
「さ、もう出る準備しないと…。もうすぐマネージャーが迎えに来るんだろ?」
名残惜しそうにハルの身体に回した腕を解き、アキがハルの顔を見上げる。
ハルは離れようとするアキの身体を引き寄せて離さない。
「嫌だ…もう少し…」
「ハル、我が儘言わない。
今日は病院と警察、そして夜にはライブだ。忙しいぞ!」
ハルは腕を緩めることもなく、返事をしない。
「ライブ終わったら、またこの部屋に一緒に帰って来てやるから…。だから…」
「マジで?!」
ハルは目尻を下げた満面の笑みを向けると、すぐにアキから離れ、着替えを始めた。
「単純だな…お前。知ってたけど」
男らしく自分を守ってくれたハルには、とても感動したけど、やっぱりこの笑顔が癒やされるな…。
昨夜、この部屋に戻ってからのいつものハルがやっぱり好きだ。
アキは改めてそう思った。