Phantom (ファントム) ~二人の陽人〜
そのアキの背後で、突然景色は色を失くした。
何とも言えない違和感を覚え、アキは恐る恐る階段の下を振り返る。
何もかも全てが…無くなっていた。
車道を行き交う車の群れも、
楽しそうに会話をしながら歩く人々も、
大通りに沿って隙間なく並んでいた店、
信号機、
標識や店の看板、
きらびやかなイルミネーションを施され、道路脇を彩るように並んでいた街路樹など、
さっきまで目にしていた全てのものが、一瞬にして姿を消していた。
ひしめき合うように建ち並んでいたビル群は、広大な荒れ果てた山肌に姿を変え、
白く整然と線を引かれた横断歩道や、アスファルトの道路は、土と砂利だけの狭い道になっていた。
さっきまで確かに存在していた見慣れた街は、その賑わいごと姿を消し、モノクロに色を変えていた。
誰もいない…
何もない…。
そんな中、この店だけが、さっきよりも朽ちた佇まいで存在しているのだ。
「何だ…これ…」
アキは一瞬にして起こった異変に、目を見開いたまま、身を固くした。
階段の手摺を掴む掌に無意識に力がこもる。